2021年の終わりに書こう。見ておくのであれば今のうちだぞ。
北九州の旦過市場も奄美大島の嘉徳海岸も、おどろくほどその構図はよく似ている。防災を口実にした開発が自然災害から人を守ると言いながら、実際には人の暮らしを改変し環境を破壊していく。
私は決して諦めている訳ではないが、まだここに一度も来たことがない人たちのために、今日はただの親切心から書いておこう。
開発に賛成している人も、反対してる人も、賛成とか反対とかに関係なく、この景観はぜひ見ておいたほうがいい。来年の2022年にはもう永遠に失われてしまうかもしれないから。死ぬまでに一度は見ておきたい風景が、今ならまだここにある。この風景を見ずに死ぬのは大損害だよ。
トタン屋根の小さな個店が、軒をならべて競い合う年末商戦が見られるのは、今年の冬が最後かもしれない。美しい砂浜の上に、まるで生きもののような川があふれ流れ出す不思議な自然現象を見られるのは、今年の冬が最後かもしれない。
]旦過市場も嘉徳海岸も、どちらも2021年の今の日本に奇跡的に残された希有な歴史景観であり自然景観である。なぜか全国的にはあまり知られていないという点もよく似ている。
もし旦過市場が厳島神社なら台風で壊れたから撤去してかさ上げして建て直すなんてだれもいわないだろうし、もし嘉徳浜が天橋立ならそこに防波堤をつくるなんてだれも思いつかないだろう。
たとえどんなに、お金や利権が絡んでいても、それよりも大切なものが、そこにあることをみなが知っているからだ。人間かコンクリートかという選択だけではないのだ。
だから、もし、たとえあなたが開発万歳でも、もう手遅れだと諦めているのだとしても、それならなおさら生きているうちにこの風景を見ておくがいい。