2015年2月3日火曜日

究極のだし巻き

年末から、だし巻き卵にはまっている。単なる卵焼きではない。

目指しているだし巻きは、箸でつまむと弾力があり、口に入れたとたんに、だし汁がじんわりと広がる京都風のだし巻きである。

 連日、だしの濃さと分量を試行錯誤するために、たくさんの卵を割った。その結果、約1ヶ月で、かなり満足できるクオリティの出汁巻きが作れるようになった。

プリンのようにぷるぷるで、口に入れると茶碗蒸しのように、だしがにじみ出る、そのぎりぎり肝要の極みを追求したレシピの完成である。


だしの基本は、コンブと鰹節。そのほか魚のアラとか鶏ガラとか貝柱とか、いろいろな味ためすとおもしろい。こんぶは細かく切って沸騰させ、ねばねばをしっかりと出す。かつおはあとから。とにもかくにも、このだしの濃さが命。

塩は小さじ半分。あとは何も入れない。だしの割合は、卵3個にたいして100cc。

フライパンにすこしだけ油を塗り、弱火で、卵の下面が固まるけど泡立たないぎりぎりの温度で、上面がまだやわらかいうちに手際よく巻いていく。だし卵は、おたま半分くらいずつたしていき、そのたびに丁寧に巻く(かぞえたら15回まいていた)。コツは、少しずつ焼いていくことと、卵が固くなりだしが出てしまわないように、低温で手早く巻いくことだ。

最初の写真の光沢は油ではなくうっすらにじみ出ているだし。温度が高かったり焼きすぎると卵が固くなり、せっかくのだしが外に出てしまう。

さいごに巻き簀で素早く巻き、5分ほどおいてく。この間に卵がしっかりかたまり、とろとろの状態から、ぷりぷりの状態になる。

まあ、それだけなのだが、火加減や巻くタイミングなど、いくつかコツはあってツボにはまる。やっているうちに良い感じがつかめるとおもう。しっとり焼ければ成功。そのまま食べてもおいしいが、おろしダイコンとレモンなどをそえるとよい。


このだし巻きは私が常々考えている「人間がおいしいと感じる味と料理の理論」のうちの一つを実践している。

それは、タンパク質に複数のうま味(グルタミン酸・イノシン酸など)と塩を合わせ、それに少し酸味を加えると、すごくおいしく感じる。というものだ。

これは、すこし発酵した肉のイメージである。

たとえば典型的なのは、トマトと卵炒め。中華料理の王道だが、なぜかあまり日本では作られません。トマトのうま味と酸味が、蛋白質の味を引き立てる。オムレツにケチャップというのも、そのバリエーションだ。

あるいは刺身と醤油と酢(ワサビやレモン)。乳酸菌でほどよく発酵したチーズ。豆腐とスグガラス。豆腐とコンブと酢醤油は湯豆腐の定番だ。肉料理につかうさまざまなソースにも、肉に対するうま味の補強だけでなく、酢や果汁で酸味が加えられている。

というわけで、卵のタンパク質+だしのアミノ酸(カツオとコンブの2種)+酸味(レモン or おろしダイコン)というのが、出汁巻きの必殺のコンボとなる。

さらに最近は懐中だし巻きセットまで考案し、どこでも出張だし巻きが可能となった。