2014年4月27日日曜日

門司港の三宜楼の素敵



かつて門司は、神戸や横浜と並ぶ国際港として世界に開かれたモダンでハイカラな街だった。その繁栄の残照が今も街の至る所に残っている。



この三宜楼(さんきろう)もそのひとつだ。この木造3階建ての料亭は、1930年(昭和5年)に竣工している。


料亭自体は1955年に営業を終え、わたしが北九州に移り住んだ頃には、街から山手に向かう路地の先に黒々とした巨大な建物だけが残されていた。門司港を訪れ、石垣の上から街を見下ろす三宜楼の圧倒的な迫力に魅入られたわたしは、知人を通じて、「何とか中を見せてもらえないか」とかつてのオーナーに再三たのみこんだが、かなわないままオーナーは物故した。


その後、この建物が売りに出されるという話が持ち上がり、わたしも微力ながら、保存活動に協力した。いまから8年前のことである。幸い募金と署名活動が実を結び、建物を買い取り、北九州市に譲渡され修繕がすすめられた。


それからさらに5年の月日がたった。2014年4月26日つまり昨日、改装を終えた三宜楼(さんきろう)がお披露目された。


10時にオープンするという案内が来ていたので、今年の講義をとっている学生たちともに、少し早めに門司港に向かったが、すでに入り口の階段には楽しみにしている人々が並んでいた。


入ってすぐに2階に上がる階段がみえる。上品で落ち着いた雰囲気がただよう。



2階にある舞台も併せて80畳の木造の大広間は、みごとな作りだ。


これだけの空間を木造で支えるために、多くの木材が緻密に組まれている。


建てられた時期は、世界大恐慌の直後で、戦争前夜の当時の世相を反映してか、中のしつらえは質素で、欄間の飾りや壁面の細工も決して凝った物ではない。しかし、それがかえって清楚でうつくしくみえる。


2階のこの大広間は2000円で借りられる。いずれ研究発表会をここでおこなう予定である。


1階には建築当時の世相を伝える資料が展示されている。1階は、今後も料亭として使われる予定である。夜はフグやウニの海鮮料理、平日限定のお昼ごはんの三宜楼御膳は1500円。リーズナブルな価格設定だとおもう。
http://r.gnavi.co.jp/1u41vx4c0000/


帰りに気づいたのだが、入り口に『「三宜楼を保存する会」にご寄付いただいた方々』というパネルがあった。


竹川大介の名前も載っていた。


おしゃれな、照明。



電話室、電話番号は8番。


門司港にすむ、よしこさんも駆けつけてくれた。大広間で歓談しながらしばしくつろぐ。


門司港散歩の楽しみがまたひとつ増えた。

2014年4月20日日曜日

ギャグとは違うのだよギャグとは

実習や学会の発表の前のプレゼンの練習の時に、よく私は「聞き手を飽きさせず注意を引くために3分にひとつはギャグを入れろ」とゼミ生たちにアドバイスをしているのだが、このアドバイス自体ギャグだとおもわれているのか、あまりとりあってもらえなかった。

むしろ「もっとギャグを!」といえばいうほど、「だめです、わたしマジメなんです」などと反発されてしまう。私は、「マジメにギャグを入れろ」といっているの……だ。さらにギャグ力が不足しているゼミ生に対しては、「今から3秒でギャグを言え」という特別なヴォイス・トレーニングを課したりもするが、これも「むちゃぶり」といわれ、はなはだ評判が悪い。

しかし、つい先日のゼミでフランス・ドゥ・ヴァールの素敵なプレゼンを見ていたときに、これまで私が気づいていなかった重大な誤解が明らかになった。

これがその映像である。

「良識ある行動をとる動物たち」
http://digitalcast.jp/v/13332/






間髪を入れず笑いをとっている彼の話術に、私は「これだよこれ、いつも言っているのはこのトークなのだ」と鬼の首を取ったように主張したところ、ゼミ生のひとりが、「これはギャグではないのではないか」というのである。

「ギャグ」ではないとすればこれはなんなんだ!ビデオを何度か再生し、いろいろな角度から検討した結果、それはヒューモア、あるいはウィットとよばれるものと考えられることが判明した。フランス・ドゥ・ヴァールはヒューマニティの研究をしているだけに、ヒューモアにも長じていたのである。

しかし私自身、関西の短大で非常勤講師をしていた時代から、講義の中で受講生の学生たちから笑いの試練を課せられてきて、2年かけてなんとか人前で話ができるくらいまで鍛えられてきた。講義の感想のほとんどは「先生の今日のギャグはさえてました」とか「ギャグが面白くていいです」とかそのような教員評価ばかりで、当時の私は講義内容の準備よりも、どこで最高のギャグをかますのかを考える毎日であった。

こうした経験をとおして地味で内気な名古屋人の私が学んだことは。「関西弁にとってギャグはすべてである」というテーゼである。私は今の今まで、そのため彼女たちの言葉を信じ、あれら「笑いの仕掛け」をすべてギャグと呼び、大切にしてきたのだ。

しかし、実はそれが、ギャグではなくヒューモアだったとは。がちょびーん!

九州あたりではギャグというと、ある種のポーズを伴う意味不明のオノマトペであったり、親父ギャグに代表される駄洒落の一種だと解釈されてしまうらしい。

そもそも、わたしの考えているギャグには深い素養が必要で、あらかじめ前提となる幅広い知識や蘊蓄を欠かすことができず、鋭い対人観察によって培われてきた人間性をフルに使った臨機応変な知的なゲームのようなものである。

というわけで、これからの講義では「ギャグが足りない」とは言わないことにする。ゼミ生たちよ、君たちに足りなかったのは「ヒューモア」だったのだ!

そんな折も折。ソロモンの友人からこんなビデオを紹介された。意味はほとんどわからないけど。面白さだけは伝わる。

Hilarious SWA Flight attendant
https://www.youtube.com/watch?v=07LFBydGjaM


SWA

ついでに3年ほど前の搭乗中にオールブラックスの映像でおどろかされ、その後もいろいろユニークな映像で物議をかもしたニュージーランド航空が、この頃どうなっているかなと気になり、調べてみたらこんな事になっていた。




そしてこれは以前にちょっと問題になったやつ、ヒューモアもきわめるとかなり危険をともなうようだ。この人たちみんな裸なのね。




北九州のスターフライヤー忍者は東京に行くたびに見るけど、


みんなマンネリ化をなんとかしようと苦労している?デルタ航空はこんなの


ヴァージン・アメリカ航空はこんな事になっている、なんだか乱暴なところがアメリカらしい。



それに毎日おんなじことばかりしていると、心がもたないよね。ロボじゃなくて人間だもの。講義や研究発表も一緒、ライブなんだから人が生きてないとね。このサウスウエスト航空のラップ機内案内は、いわば労働から人間性の開放を謳いあげている。

こうした「機内安全ビデオ」はたとえ退屈でつまらないものでも、なんとかして人々の注意を引いて話をきいてもらおうというあたりで全力の勝負をかけている。だからある意味、いかに情報を伝えるかを考えるプレゼンの試金石として、とてもよい教材になるだろう。

そして今後、講義で、こうした映像を紹介するときには、「ギャグ満載」ではなく、「ヒューモアに富んでいる」と表現することにしよう。

さらに、ゼミ生たちには、これからは「今から3秒でヒューモアを言え」という特訓に変わるので、そこんとこもあわせてよろしく。

2014年4月15日火曜日

「よしこさんと七色の花」展


会期:2014年3月3日~5月10日
会場:大學堂・屋根裏博物館
開館時間:10時~17時
※水・日曜、祝日は休館
入場無料

【長門屋とよしこさん】
 

よしこさんは門司港の栄町銀天街にある「長門屋」で働いています。仕事の合間に描く絵で店内は、数えきれないほどの絵であふれています。彼女の作品の多くは、サインペンやボールペンなどの日常的な画材によって色紙に描かれています。


その画面いっぱいに踊る緻密で自由な筆致と、めまいを起こしそうな色彩が生み出す素朴で懐かしいメルヘン世界は、観るものを魅了し、そしてどこか温かい気持ちにさせます。


よしこさんは語ります。「描きたいものを描いて、色んな人に観てもらい、喜んでくれれば私も幸せ」。多くの人が彼女の人柄や作品に惹かれ店を訪れます。



本展では、すでにお店の中には展示しきれない膨大な作品の中から、描かずにはいられなかった熱い情動の結晶を選りすぐりました。



【開催に際して】


門司の街ではじめてよしこさんの絵に出会ったのは、2007の秋のことでした。大学の博物館実習のために学生たちをカボチャドキヤ国立美術館に引率する道すがら、店の中に雑然と貼られた色紙をみてしまったのです。


私は動揺を隠せませんでした。なんと呼べばよいのでしょう。それはまるで生まれたままの無防備な絵でした。学芸員を志す学生たちも、彼らなりの芸術への信念にいくばくかの不安を感じたに違いありません。


それから毎年、実習の際には必ず長門屋さんにたちよることにしました。よしこさんの絵は年ごとに新しい印象をあたえてくれます。いつかひとつところに並べてゆっくりと鑑賞してみたいと思っていました。そしてそれはぜひとも春でなければなりません。


この願いがようやくここにかなうことをとても喜ばしく思います。みなさまとともに、しばしのあいだ七色の花を楽しみたいと思います。


【よしこさんの作品について】



よしこさんの作品の多くは、サインペンやボールペンなどの日常的な画材によって描かれています。画面いっぱいに踊る自由な筆致と、緻密で鮮やかな色彩が生み出す独特な世界は、観るものを魅惑し、そして、どこか懐かしい気持ちにしてくれます。それは、この豊かな幻想世界が、よしこさん自身の野山や海で遊んだ、幼い頃の記憶から生まれているからなのかもしれません。



よしこさんの膨大な数の作品では、さまざまなモチーフが取り上げられています。それらは、およそ時代順に「子どもと動物たちの物語」「花と少女の夢世界」「街と旅の幻影」「海と野山の収穫祭」の4作品群に分類されます。



本企画展では、それぞれの作品群から選ばれた秀作を、月ごとに一部を入れ替えながら、できるだけたくさん観ていただきたいと考えています。また、本企画展のために制作された、よしこさんにとって初の試みとなる大型作品を、会期中に特別公開いたします。屋根裏博物館の壁一面に咲いた七色の花の中から、あなたの春の幸せをみつけて下さい



「子どもと動物たちの物語」
もっとも初期の作品群で、よしこさんの魅力が存分に発揮されている物語世界。よしこさん自身の子どもの頃の思い出や、どこかで読んだ本の中のお話が、不思議な幻想に姿を変えてよみがえる。この生きとし生けるものが融合する独特なアニミズム世界は、観る者の視線をとらえてはなさない。



「花と少女の夢世界」
春が好きなよしこさんは、少女と花をモチーフにした作品を数多く描いている。色紙の中央に鮮やかに描かれた桜の木は世界樹のような存在感をもって私たちの前に迫ってくる。少女たちもまた、かぎりなく花に近い存在なのだろう。この一角は、まるで福岡柳川の「さげもん」をみるように華やかな春の雰囲気をかもしだし、ひとときの雛の夢にひたることができる。



「街と旅の幻影」
海と山に囲まれた山口山陰の寒村がよしこさんの原風景であり、今は門司港の街に暮らしている。よしこさんの想像力は、見慣れた日常を基点に時代や空間を越え、地球上のあらゆる場所へとはばたいていく。インドやタイ、欧州のどこか、失われてしまった日本の田園。花と少女の世界とは対照的な大胆な筆致によって、よしこさんの心の旅の深淵が刻まれていく。



「海と野山の収穫祭」
満ちあふれる生命。生きていくための食べ物。幼い頃に海や野山で遊び、さまざまな自然の幸を口にしてきたよしこさん。そして今も市場で働くよしこさん。食こそが人間の幸せであり、命の源である。この作品群は最新作を含む大型作品がならび、よしこさんの新境地が展開されている。大胆な構図と森羅万象への賛歌は、生と死がそのぎりぎりのところで邂逅するひとつの曼荼羅をみる思いである。



 【プロフィール】
山口県出身。
幼少の頃から絵を描くのが好きで、外でばらまかれるビラやごみ捨て場にある紙を探しては落書きをしていた。
小学校3年生の時に美術の先生に職員室へ呼ばれ、絵を褒められる。その後も絵のコンクールに何度も入選をする。
19歳の時、門司へやってくる。
20歳で結婚、出産をする。
子育てをしつつ、新聞配達をしながら働く。
その間も絵は描いていたが、本格的に描き始めたのは数年前。
現在63歳。朝はトイレ掃除や落ち葉拾いの仕事もしながら、門司港・栄町商店街のながと屋で働いている。
座右の銘は「一期一会の出会いを大事に」。