2012年3月21日水曜日

首里の末吉宮で神様に会う

沖縄の映画にときどき出てくる神様は、白いひげを生やしたおじいさんである。



斎場御嶽(せーふぁうたき)は世界遺産に登録されすっかり有名になったが、首里城のすぐ近くにありながら、ほとんど知られていないのが末吉宮跡。街の中にのこされた深い森に、王朝時代そのままの姿で聖地が点在する。


山を登りたくなければ、モノレールの儀保駅から行くのがよい。しかし、入り口には何の案内もなく、直感を信じて森を進むしかない。神様の声にしたがって歩くしかない。



墓地を抜け、ときおりあらわれる石畳の上をあるく。周りにはクワズイモが茂り、藪に隠れた拝所にむかう細い踏み跡が残る。



あたりの風景は、まるでバヌアツのフツナ島を歩いているようだ。とても、ここが那覇の一部とは思えない。



 木々が風に揺れる。那覇の街が一望できる。空気が濃い。





森の声が聞こえる。こちらに来いという。細い道に入る。石が積まれた坂をいく。藪の道。




 目の前に崖が迫る。


崖から垂れ下がるガジュマルの根。岩の割れ目からこぼれ出す清らかな水。


気づけばあたり一面に咲き乱れる紅い花。


神様の声が正しく私をここに導いた。


崖を過ぎると、石積みの社がある。ここは神が憩うところ。神の住む聖地はその社の裏にある。



屹立する岩。どこかで見たような風景。そう、宗像宮の沖の島のあの風景。



沖縄の人はこの聖地を御嶽(ウタキ)とよび、日々拝む。バヌアツでいうタブー・プレイスである。人間が畏れ敬うものはどこも同じだ。




末吉宮から下は、森の中を進む神の道ではなく、綺麗に石が敷かれた人の道が続く。







市立病院前の駅と市街地が眼下に広がる。そのとき今おりてきた石段の上に人の気配を感じた。


白いひげを生やしたおじいさんだ。無謀にも神様にカメラを向けた。しかし神様のすがたはカメラには映らなかった。