2012年4月16日月曜日

花のなかに春の朽ちる


花の春に 鄙をおとなう


若宮の山中にしだれ桜をたづねし 道すがら 
古き酒蔵を みつけたり


麹室の入り口あらはに 赤錆びし 琺瑯の樽のころぶ


並びし棟も すでに風雨に朽ち


往年の賑わひ はかなくも
蔵人たちの面影 黒々と地に消ゆ。


香に誘われ 路地を行けば


紅き桃花のもと 媼たたずむ


夕されば 光のうちに


最期の輝きをのこす そのせつなよ


山中のしだれは いまをさかりに 
明日知らぬ身の 春をたのしむ