2015年2月21日土曜日

ヤンバルの森・夜(やんばる旅その5)

ユルヂ開墾地にはいる山道はすぐに見つかった。周りは樹木に覆われ、すきまから光が漏れてくる。森の中にいる感覚がなんとも心地よい。二又の沢が合流するちょっとした窪地にテントを張る。琉球大学のワンゲルの山小屋のちかくである。


わたしはこの時とばかりに自分用のヘネシーハンモックをつるす。このあと寝るときになってわかったのだが、沖縄では定番である蚊帳仕様のヘネシーハンモックとアライテントのカヤライズも、この時期にはちょっと寒すぎて不向きであった。


薪を集め、沢の水をくみ、夕食の準備にとりかかる。鳥が飛び交い、蛙の鳴き声がする。藪の中でがさがさ音がする。すぐ近くの木に真っ黒な大型のキツツキがとまる。ノグチゲラだ。こんなに簡単に見られるとは思わなかった。白黒模様のコゲラもやってくる。


森の枯れ木はずいぶん湿っており、たき火を起こすのに手間どった。真冬の夜は沖縄とは思えない寒さだ。道の駅では肉類が調達できなかったために、もっぱら野菜中心のベジタリアンな夕食が始まった。


日暮れ時に、テントの近くでカッカッカッというけたたましい鳴き声が聞こえる。あとで知ったがこれはヤンバルクイナの鳴き声だった。木の上の寝床にもどってきたのだろうか。近くだったので静かにのぞいてみれば良かった。


たき火を囲んで魚部と野研との交流が始まる。2日分くらいと考えていた泡盛「まるた」の一升瓶がどんどんへっていく。おなかも満たされ、ちょっと蛋白質系のつまみもほしいなというところで、魚部がギョブスーツを着用して沢に出動する。さすが魚部である。てなれた網捌きでテナガエビやモズクガニを捕獲する。野研はそれを串に刺して炭焼きする係だ。


かつてこの山に住んでいた人も、こうして山の恵みを口にすることがあったに違いない。




そんなこんなで森の夜を楽しんでいると、上の方からライトの明かりが近づいてくる。10時近くになってゲッチョ先生こと盛口満さんが登場した。さすが森の達人である。すでに食べ物の残りもわずかだったが、ゆでたてのモズクガニを献上し乾杯をする。結局「まるた」は一晩であいてしまった。